アメリカ帝国主義との戦い
2003年3月26日

2003年3月26日付読売新聞朝刊
世界政策上級研究所上級研究員ポール・バーマン氏執筆の
「アメリカの視点」によると、
イラクは大量破壊兵器を過去に使用した前科があり、
体制の背後には世界の脅威となる攻撃的な教義があり、
それはナチズムと、スターリニズムの影響を受けたものであり、
アラブとイスラム世界がユダヤ人と米国から攻撃を受けてきた
という偏執狂的かつ妄想的な世界観に基づいているという。
中東で勢いを増すこの運動は米国の存在を脅かすので、
この全体主義を終わらせ、自由と民主主義を原則にした社会を
うち立てるのだという。
過去、米国は多くの独裁者や抑圧的な政府を支援してきたという失敗を犯したが、
様々な考え方、理想、宗教、価値観が共存し、競い合える社会である
完璧な民主主義を目指して戦う
という。
この見解を検討してみる。

まず、大量破壊兵器を過去に使用した前科があるのは、一番にアメリカだ。
アメリカは広島と長崎に原爆を落とした。
その放射線、熱線、爆風などの破壊力はすさまじく、
当時の広島と長崎に地獄絵図を出現させ、被爆者は今でも苦しんでいる。
核兵器はその悲惨さに鑑み、
どんな理由があっても人道上使用されることが許されない兵器だ。
その大量破壊兵器を
核の均衡によって熱戦を防いだ東西冷戦が終わったにも関わらず
今でもアメリカは千発以上の世界一の保有量だ。
日本本土決戦で失われる将兵の生命を救うために原爆を落としたとアメリカは言う。
しかし、日本を降伏させるためには遙に簡単な方法があった。
天皇制の存続を何らかの形で保障すれば日本は素直に降伏したのである。
遅くとも1945年5月には天皇や日本の政治指導者と軍部の大半には
敗北は避けられないとの認識があり、
彼らが日本の核心だと信じていた天皇制の存続が保障されれば、
その他の点ではどんな譲歩もしたのである。
日本はそのような意思表示もしていたし、
情報戦に優れたアメリカは当然分かっていたはずだ。
そして、アメリカにとっても戦後象徴天皇制を認めたように譲れない点ではなかった。
にもかかわらず、原爆を投下した。
連合軍将兵の生命を救うためというのは単なる言い訳に過ぎない。
イスラム原理主義がナチズムの影響を受けて成立したとは信じられない。
ナチズムはユダヤ人虐殺などにより公式に悪と断罪されたイデオロギーであり、
アラブの人々が敢えて悪を選ぶとは断じて思えない。
また、同じように収容所群島を生んだスターリニズムをそのまま信奉しているとは信じられない。
しかし、社会主義の影響があるのは当然だろう。
イスラム教がイスラム共同体内の平等を重んじ、
豊かな者による搾取を禁じる宗教だからだ。
アラブとイスラム世界がユダヤ人と米国から攻撃を受けてきた
と考えるのを偏執狂的かつ妄想的な世界観と言うのはすごい虚偽だ。
イスラエルがアラブ人の暮らしてきた土地を奪ったのは紛れもない事実であり、
そのイスラエルをアメリカが支援してきたのも紛れもない事実だ。
ユダヤ人が以前に暮らしていたからアラブ人から奪っても良いというなら
○○人が以前に暮らしているが今は××人が暮らしているという例は無数にあるし、
アメリカ人はネイティブ・アメリカンに、
オーストラリアはアボリジニに全土を返還すべきこととなろう。
パレスティナは聖書の神がユダヤ人に約束された
約束の土地だからというのもなりたたない。
聖書の神はユダヤ人が神に対する義務を果たさないから旧約を撤回している。
だから約束の土地の約束も当然無効である。
キリスト教はその前提に立って新約を立てるのではないか。
アメリカもキリスト教国家のはずだが。
当然、イスラム教も約束の土地だなどとは認められないだろう。
イスラエルはユダヤ人大虐殺により同情を受けた
ユダヤ人が自身を守るために築いた国家だ。

今、米国が脅かされているとすれば、
それは米国の存在ではなく、米国の覇権だ。
アラブと米国の間には広大な海と空があり、
米国は守られている。
テロによってアメリカ人の生命が危険にさらされることがあっても
米国の存立が脅かされることはない。
9.11の復讐とその背後勢力本体の壊滅はアフガニスタン侵攻で済んでいる。
国際社会も人道主義の原則に立った上で、
様々な考え方、理想、宗教、価値観が共存し、競い合える社会であるべきだ。
日本は戦後、政治的経済的にアメリカとほとんど変わらない自由と民主主義の国家だった。
しかし、その文化的背景が違うと言って、日本異質論を振りかざした。
ポール・バーマン氏も言うように過去、
米国は多くの独裁者や抑圧的な政府を支援してきたが、
それは、そのことがアメリカの国益に合致するからであり、
意図的に為されたことなのである。



「救世国民同盟の主張」へ戻る

「トップページ」へ戻る