ビットコインは禁止すべきだ。
2014年1月20日
キャメロン・フラー氏による
『ビットコインをめぐる5つの誤解を解く
−儲けた噂を聞き付けてやみくもに飛び付く前に話題の仮想通貨を正しく理解しよう−』

(ニューズウィーク日本版 2014年1月15日配信掲載)
について論じる。


昨年から話題の仮想通貨「ビットコイン」。
年末には1ビットコイン=約800ドルと年初の約60倍まで高騰した。
年の初めに100ドル分投資していれば、年の終わりには6000ドル以上に大化けしていた計算だ。
ならば「今年こそ」と投資を始める前に、ビットコインに関する5つの誤解を解いておこう。

1)通貨である
 どの国の政府もビットコインを正式な通貨と認めていない。
ドイツは合法な決済手段として認めているが、これは課税対象にしたいという理由からだ。
 とはいえ、通貨と認められていないから、あるいは中国のように非合法化する国があるからといって、
価値を失うわけではない。
ビットコインは実物資産のような価値を持ち、
個人間の決済システムとしてはそれ以上の価値があるかもしれない。
 ビットコインは大物からも支持されている。
フェイスブックの元となるアイデアをめぐりマーク・ザッカーバーグと争ったウィンクルボス兄弟や、
ヴァージングループの創業者リチャード・ブランソンといった著名人がビットコインを推奨している。
ビットコインによる支払いを導入する店舗は日に日に増加。各国政府も注目し始めているのは間違いない。


私見
通貨とは「強制通用力を有する貨幣」のことである。
そして、ビットコインは各国政府が通貨として認めておらず、強制通用力を有しない。
従って、ビットコインは確かに、通貨ではない。
しかし、通貨と同じく貨幣としての機能を果たしている。
各国政府が認めている通貨を公的貨幣というなら、
ビットコインのようなものは私的貨幣と言えるだろう。
そして、同じ貨幣としての機能を果たしているので、
ビットコインは通貨と競合し、通貨を蚕食する関係にあり、
「仮想通貨」とも呼ばれている。
有名人が支持していることは、
そのような有名人に人気があることを示すだけである。
彼らは、恐らく、ビットコインで利益を得たので支持するのだろう。
販売拡大につながるものになら何でも飛びつく性質がある
小売業がビットコインに興味を示しても不思議では無い。
各国政府は公的貨幣(通貨)を回避し蚕食する私的貨幣に目を光らすのは当然である。


2)ねずみ講の一種
 ビットコインに関する議論には「ねずみ講」という言葉が付きまとう。
だがそれは間違いだ。
分散型の通貨であり、詐欺集団がいるわけではない。


私見
詐欺集団がいないにしても、
ビットコインの採掘者は、取引手数料や造幣収益を得ている。
公的貨幣を回避することにより
「誰かが儲けるためのネタ」であることは、
ねずみ講と同じである。
但し、ビットコインは分散型なので、
ねずみ講と違い、
一つの講に複数の講元が存在する。


3)絶対に高騰(暴落)する
 ビットコインの価格変動は激しい。
それでも昨年初めの時点で、ここまで高騰すると予想した人は誰もいなかっただろう。
 ウィンクルボス兄弟は先日、ビットコインの価値はいずれ4万ドルまで上昇するだろうと語った。
しかし大物投資家が上がると言ったからといって、上がるとは限らない。
実際、ウィンクルボス兄弟が購入した昨年4月10日の翌日にビットコインは大暴落した。
 上がり過ぎた価格は、近いうちにまた暴落するとみる向きもある。
おそらく高騰と暴落、どちらも起き得るだろう。ビットコインの価格は相場次第なのだから。
ゆえに乱高下しやすく、今後も大幅な変動が続くと予想される。どう転ぶかは賭けだ。


私見
確かに、私的貨幣であるビットコインの価格変動がどう転ぶかは賭だ。
それは公的貨幣(通貨)と同じことだ。
そして、私はビットコインのような私的貨幣は禁止して廃止すべきだ考えている。
廃止されるものならば、
暴落が運命付けられていると言えるだろう。


4)簡単に儲かる
 前述のとおりビットコイン価格は変動の振り幅が大きいので、儲けるのは容易ではない。
短期的にはいくらか利益が出るかもしれないが、
投資に回せる大量の余剰資金がない限り、
既存の株式市場で「成長株」を狙うほうが一般投資家向きだろう。
長期投資を行うなら、歴史の浅いビットコイン市場より実績のある市場が適している。
 しかもビットコインの急騰が始まったのはこの2カ月ほどのことにすぎない。
昨年の大半の時期は90ドルと250ドルの間を行き来していた。
 また、ビットコインは「製造」が困難になってきている。
生成に使われるアルゴリズムには特殊なコンピューターが必要だ。
だがビットコインの知名度が高まるにつれ、
処理速度の速いグラフィックカードの生産が需要に追い付かなくなっている。


私見
ビットコインの「製造」は一般的に言って困難であって弱者は簡単に儲からないのだろうが、
一部の強者はビットコインの製造に関わって簡単に儲けることができる。


5)違法行為に悪用されている
 昨年ビットコインに注目が集まった最大の要因は、
麻薬取引などの闇サイト「シルクロード」の摘発だろう。
仮想通貨の匿名性や金融機関の不在は、闇サイト利用者に好都合だった。
 だがシルクロードは閉鎖されてもビットコインは生き残ったことで、
ビットコインの「犯罪の匂い」は薄れた。
今でもビットコインと違法行為の関連を疑う人はいる。
それでも導入する店が増えている事実は、まっとうな取引に使われている証拠だ。


私見
貨幣としての機能を持つので、
当然、まっとうな取引に使うこともできるが、
国家が管理する公的貨幣ではなく、
私的貨幣なので、
違法行為に悪用される危険性が高い。

ビットコインのような仮想通貨が出現する前は、
貨幣発行を中央銀行に独占させることで、
貨幣発行にかかわる公平性・公正性を担保できてきた。
国家は独占することにより、
利益を得たが、
国家はその利益を財政支出により、
国民に公平・公正に還元できる。
私的貨幣がはびこれば
そのような公的役割を果たしてきた公的貨幣が弱くなる。
他方、
私的貨幣の造幣にかかわった一部の強者のみが利益を手にする。
その利益が課税により回収されるにしても、
公的貨幣のようにすべてが国家のものとなるのではなく、一部に過ぎない。
貨幣発行に関わる利益は
これまで通り、
国家(もしくは国際政府)が独占すべきだ。
又、違法行為に悪用される危険性が高い。
そして、
中央銀行が発行する公平・公正な貨幣が存在し、
ビットコインのようなものが存在しなくても、経済取引は成立する。
ビットコインのような私的貨幣である仮想通貨はすべて国家(及び国際政府)が禁止すべきだ。
公平に敏感な中国政府が禁止しているのは肯けるところだ。





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