哲学の原理の先頭へのボタン 前のページへのボタン 次のページへのボタン

序論

 この論文は、人間世界の構造を全体的に明らかにしようとするものである。より良き生や生きる意味を探究する人生哲学ではなく、形而上学に属するものである。しかし、人間世界の構造が客観的全体的に明らかになれば、世界の不条理性も緩和され、人間の生活や生きる意味も影響を受けるであろう。
 人間の属する世界は、客観的全体的には、どのような構造を持っているのであろうか。物理世界で原子が秩序正しく並んでいるのであるから、人間世界も根本においては秩序正しく整合性を保っているであろう。そして、整合性を持った人間の世界であるから、価値自由な人間なら、その構造は認識可能であろう。また、人間世界の構造解明には人間そのものの存在が重要である。人間存在が解明されなければ、人間世界を解明したとは言えないであろう。私は、価値自由な孤独に苦しみながら、人間存在を明らかにしつつ、この世界を理解する究極の知恵を求めてきた。科学により分割された世界像を全体的に再構成し総合しようと努力してきた。その探究の結果がこの論文である。唯一存在する真理と主張するものではないが、もっとも合理的な人間世界のモデルではないかと考えている。


第1章 全体構造

大構造図



 第1節 世界内存在
 右に掲げる構造図は人間の生活する現実世界の構造を示すものである。人間は世界内存在である。自己実現をはかるべき世界にほうりこまれている。その世界と相互に関係しあって生きている。構造図の円はその世界を示すものである。
 人間存在を物理的に見れば、人間の体は他の者と何もつながっていない。物理的に見れば、人間は他とのつながりのない球である。この球である人間を構造図では円として表している。このような独立した存在として人間は通常、社会内に存在する。
 しかし、人間が精神的につながり、絆を持てることを否定するものではない。精神感応の存在も否定しない。人間は同じ価値、感情を共有することによりつながっているという安心感を持てる。そして、価値観を共有する同情により他の者とつながって世界内で大きな力を持つことができる。

 第2節 構造図の説明
 人間を人間にしている本質は知性、感性、意志から心が構成され、その心に精神が宿ると共に意識が存することにある。
 知性とは、世界の構造を努力により、できるだけ客観的、体系的、整合的に内面化したものである。これにより人間は世界の構造を理解し、世界の構造に適合した働きをすることができるようになる。
 感性とは、事物が自己にとってどういう価値(好き・嫌い、善・悪、快・不快等)を持つかの情報を内面化したものである。これにより、人間は世界に独自の意味付を行なうことができる。人間が独自の価値観・価値の体系を持つことが可能になる。そして、価値が存在するのは人間が現存在であることによる。すなわち、人間は自身の構造―世界を持ち、その世界について意味付を行なっていかなければ生きていけないからである。人間は意味のない空虚な真空を生きるには弱すぎる。
 意志は、生きるということを支える力であり、人間の存在を可能にするものである。すなわち、人間が生存を欲し、ある価値を追求するのは、これが存在するからである。いわば生命を求める人間の本能である。
 知性、感性、意志は、人間の心の本体である脳において次のような対応関係を持つと考えられる。
知性=左脳
感性=右脳
意志=間脳+小脳
 精神は、この心のある部分(精神支配部分)を支配し、精神は物質である心の影響を受けてイデアを宿す。プラトン(427-347B.C. 古代ギリシアの大哲学者)の洞窟のたとえどおり、イデアそのものを手にすることは不可能であるが、イデアが精神に宿ることは可能なのである。そして、意志が、精神に宿ったイデアを現実のものとしようとする。意志が肉体を動かして外界に変化を起こさせるのである。精神は物質を支配し、物質は精神に影響を与える。
精神支配部分=灰脳
 以下、知性等と同様な基礎的概念のうち構造図に基礎づけることが可能なものを、構造図に斜線を引いて示そうと思う。空中を漂う概念は望ましくなく、身体等の現実の構造に基礎づけるべきである。

【悟性】   知性と感性
悟性

【理性】   悟性のうち精神支配部分=精神の光の及ぶ部分     合理的行動を可能にする
理性

【意識】  意志を識るところのもの=精神+理性
意識

【無意識】  意識の否定
無意識

【良心】 心のうち精神支配部分
良心

【超自我】 心のうち精神の非支配部分
超自我

哲学の原理の先頭へのボタン 前のページへのボタン 次のページへのボタン