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第4章 現実世界の構造認識

 第1節 認識論
 命題の正しさのレベルには三段階ある。まず、文法、語法、綴りなどに適合しているか否かの段階。次に、論理のレベル。知識、理論、法則、真理などに適合しているか否かのレベル。これに適合している場合を「妥当」と言う。そして、命題が事実と一致しているか否かの段階。一致している場合を「真」という。知識、理論、法則、真理などが事実と一致している場合があることは当然だが、命題が知識、理論、法則、真理などに一致していることは必ずしも命題の真であることを保証しない。
 認識構造を通して得る社会構造の認識が真でありうることは、社会に実在するものが認識構造を通して現実化されたものであることにより確認される。人間が現実を認識して得た認識結果は、認識構造(となった現実)との整合性をチェックした上で、認識構造の整合的な部分となる。そのために、認識構造は現実に近づく。認識と認識構造(となった現実)との整合性をチェックすれば、力ある知識が得られるからである。認識と認識構造(となった現実)との整合性をチェックしないと、認識構造に矛盾が生じ、現実を認識する力が低下するからである。他方、人間は認識構造に整合的な計画を立てて、その計画と現実との整合性をチェックした上で、計画に基づき現実を改変する。そのために、現実は認識構造に近づく。計画と現実との整合性をチェックしないと、計画の現実を改変する力が低下するからである。このようにして、認識構造と現実は等しさに近づく。すなわち認識構造と実在(現実)は一致しうるのである。このような認識構造により、認識される認識結果は、真である蓋然性が高まる。
 真である蓋然性が高い認識結果と、直接関係する分野において既に多数の人々により真であると確認された認識結果との整合性を照らし合わせる。それにより多数の人が真であると認める認識結果と、間接的に関係する分野において既に多数の人々により真であると確認された認識結果との整合性を照らし合わせる。このような営みにより、学が真でありうる。学が真でありうることは、学が整合性を確認しつつなされたイデアの現実化であることによる。
 この営みにより、自然法則の認識においても、認識構造を意図的な努力により実在と一致させることと、認識結果を実在と一致させることが可能となる。但し、自然科学においては、実在との整合性の検証に実験という手段が重要性を持ち、これにより実在との一致を高度に確保できる。整合的な物質とその自然法則に基づく構成物たる実在は、整合的な構造を持ち、努力して整合性を獲得した認識構造により真に認識されうるのである。

 第2節 各論
 概念を明確化することにより、人間世界の構造の合理的モデルを作りたいと思う。それには、今までの検討により明らかになった概念とアリストテレス(384-322B.C. 古代ギリシアの大哲学者)のカテゴリー「実体」「量」「質」「関係」「場所」「時刻」「位置」「状態」「能動」「受動」とプラトンの最高類概念「存在」「同」「異」「変化」「持続」を基礎的な概念として使用したいと思う。カテゴリーは静的な存在が必然的に持つ概念である。そして、最高類概念は動的な存在が必然的に持つ概念である。この二人のカテゴリーとこの論究によって明らかにしてある概念を基礎とする。但し、「実体」は三元論の立場から、「精神」、「イデア」、「物質」に分けられる。また、私の判断で、「有」と「付加」の二つをカテゴリーとして追加する。
 これらの範疇を前提とすることで使用できる表現の基本的なものを挙げてみよう。
「能動」とは、「<主>→<客>」ということである。これから「<主>が<客>に〜する」あるいは「<主>が<客>を〜する」という表現が使用できる。
「受動」とは、「<主>←<客>」ということである。これから「<主>が<客>から〜される」あるいは「<主>が<客>により〜を受ける」という表現が使用できる。
「能動」に「有」を加えると「<主>が<客>を有する」という表見が使用できる。また、その意味の「の」が使用できる。
「付加」からは「<A>と<B>」「<A>、それに<B>」という表現が使用できる。
「量」からは「〜という量」、「質」からは「〜という質」という表現が使用できる。
「関係」からは「<A>と<B>との関係」「〜という関係」という表現が使用できる。
「場所」からは「〜という場所」という表現が使用できる。
「位置」からは「〜という位置で」「〜という位置に」という表現を使用できる。
「時刻」からは「〜という時に」という表現が使用できる。
「状態」からは「<A>が〜である状態」「<A>が〜という状態」「〜という状態にある<A>」という表現が使用できる。
「能動」と「位置」と「状態」からは「<主>が<客>を〜にする」という表現が使用できる。
「場所」と「位置」と「状態」からは「〜で」「〜において」という表現が使用できる。
「同」からは「<A>が<B>と同じ」「同じ〜」という表現が使用できる。
「異」からは「<A>が<B>と異なる」「異なる〜」という表現が使用できる。
「変化」からは「<A>が<B>に変化する」「<A>から<B>への変化」という表現が使用できる。
「持続」からは「〜が持続する」という表現が使用できる。
「存在」からは「〜がある(存在する)」という表現が使用できる。そして「存在」はこれらの表現の大前提である。
 これらの基礎を用いて、歴史的な人間存在とその世界の構造の合理的モデルを完成することができる。
 以下、単なる言い換えではなく、哲学的根拠に基づき、構造図とその理論に整合的に概念の定義を行なって人間世界のモデルを完成して行きたいと思う。
もの

事(こと)
性質
未来
時間
世界
実現
可能性

優れる
同時
かつ
分割
因果関係
により
現実
事実
価値
価値がある
意味
情報
考える
主体
認める
現実化する
欲する
仮定(もし〜ならば)
可能(できる)
認識
全体
評価
作用する
現在
している

自己
ではない(〜の他)
他者
従う
使役(させる)
従わせる
属する
知覚
努力
べき
目的
のために
必要
容易
明確
態度
判断する
肯定する
否定する(非、不)

偶然性
必然性
生じる
なる
得る
使用する
感覚
感じる
知識
意欲(しようとする)
条件関係
部分
記憶
思う
感情

宿す
意識する
支配
達成する
物理力
影響
まとまり
構造
性格
決まる
適用範囲
概念
形相
決める
内包
定義

相違
特徴
区別する
分類
種類
構成
質料
過去
違い
一致
意思
合意
知る
知らせる
示す
尺度

基準
規範
約束
空間
関心
予想
期待
効果
成功
使う
道具
成る
方法
体系
伝達
言語
述べる
主語
様子


記号

見る
表す



命題
矛盾
矛盾がない
説明
理論
体系化する

学問
法則
劣る
優劣
比較
多少


減少
増加
大小


縮小
増大
より優れる
改善
利益
より劣る
改悪
不利益
正しい
決まり
秩序



規制
制度
働く
思考
問題
意見
相手
主張

争い
当事者
紛争
対象
何か
すべて
関係者
解決
平和

隔たり
間隔
移動する
接近(近づく)
自由
実体
物質
イデア
状態の質
時刻の変化
時刻が変化する性質
存在の場所
イデアから物質への変化
未来に実現する質と量
実現可能性を有すること
力を有する状態
同じ時刻
同時に<A>と<B>が同じ状態を持続する
もの事が質と量を持続すると同時にそのもの事の性質が変化すること
もの事(原因)と未来のもの事(結果)が関係を有すること
〜が原因で結果として
世界の状態
分割された世界
イデアの質、それに「価値(イデアの質)がある」もの事
イデアの質が優れること
もの事が有する価値
事実の意味
精神と悟性がする
人間と意志を有するもの
価値があると考える
実現する
意志が現実化を認める
もの事の結果を考えること
実現を欲すれば実現すること
悟性が情報を有する
分割されるもの事
価値の質を考えること
有する力を現実化できる
主体が力を有する時刻
現在すること

現在の場所で意識している主体
異なる状態
現在の場所で自己ではない主体
他者の力を認めること
主体が変化を欲すること
従う状態に変化させること
従わせることができること
悟性が有する情報
意志を持続して作用させること
現実化を欲すること
現実界に実現すべきイデア
〜を実現する目的で
存在するならば目的を現実化できること
努力を必要としない状態
容易に認識できること
もの事を認識するならば実現する心の状態
態度を明確な状態にすること
真であるという判断
真ではないという判断
存在の否定
非存在が可能    <九鬼周造作>
非存在が不可能   <九鬼周造作>
無から存在への変化
変化が生じること
主体に属する状態になること
作用させること
肉体を使用することにより得られる情報
肉体を使用することにより情報を得る
認識により得られた情報
欲するもののために努力すること
もの事(条件)が無ければもの事(結果)が現実化しない関係
全体の否定
認識した結果が心の部分となったもの
精神と感性がする
思った結果

存在するようになる
意識が精神に情報を宿す
従わせることのできる状態
目的の現実化
物質による力
物理力による精神に宿るイデアの変化
優れた意味を有する全体
人間が力を作用させれば目的が実現するまとまり
心の構造の意味
判断できること
Pの場合、もの事がPであるかの判断
意味が決まることにより適用範囲が決まるイデア
構造の意味
主体が態度を明確にし、かつ持続させること
概念の意味
概念の内包を明確にすることにより適用範囲を決めること
場所の部分
変化が存在する所
他のものと異なる所
特徴により異なるもの事にする
概念の適用範囲を決めることにより他と区別する
分類により生じるまとまり
構造の部分になること、またはなっている状態
構造を構成するものの種類
主体が力を有しない時刻
同の否定
違いが存在しないこと
精神に宿ったイデア
意思が一致すること
主体が意識して知識を得ること
知る状態にする
明確に知らせること
量を示すもの事

価値を決めるために使用する尺度
主体が従うべき基準
自己と他者が合意する規範
ものが無い場所
主体が優れた知識を欲する態度
未来を意識すること
イデアの実現を欲し、かつ実現を予想する態度
結果が有する力
目的を達成し、かつ期待した効果を得ること
主体が作用させる
目的を実現するために使うもの
構造の部分となること
道具から成る目的を有する構造
構造から成る構造
他者に知らせること
意思を伝達するために概念を使う方法の体系
言語で情報を伝達すること
主体が関心を有して述べるもの事
状態の情報
ものが有する空間の様子
概念を示す約束、かつ決めた形を有するイデア
情報を伝達するために使う印
(生物学により定義される)
目を使うことにより認識すること
見ることができる状態にすること
言語を表すために使う記号
概念を表す状態にある字のまとまり
意味を有する状態にある語のまとまり
主語の情報を知らせる文
命題を肯定すると同時に否定すること
矛盾を現実化させないこと
もの事の意味を明確にすること
異なる事実と認識を矛盾なく説明できる知識
体系を現実化すること

理論に従って体系化された知識と方法
学問が真であると判断した理論
力が無いこと
質の量の関係
優劣を考えること
全体と部分の量の関係
部分に対する全体の多少
全体に対する部分の多少
多から少への量の変化
少から多への量の変化
全体と部分の形の関係
部分に対する全体の大小
全体に対する部分の大小
大から小への形の変化
小から大への形の変化
優れる性質が〜より多い
より優れた状態になること
得るならば主体の状態が改善するもの事
劣る性質が〜より多い
より劣った状態になること
得るならば主体の状態が改悪するもの事
価値基準が認めること
決められたこと
もの事が正しい状態を持続するために支配するべき決まり
イデア界全体の秩序
量を正しい状態で認識するために使う記号
全体の性質が有する数
規範に従わせること
意志により現実化された社会を規制する構造
有する力を使うこと
心を働かせること
思考を必要とする性質の命題
主体の問題への態度
同じ問題に関心を有する人間
自己の意見を相手に認めさせようとすること

同じ価値を得るために相手に主張する関係
自己と相手
解決するために当事者の他の人間が必要な争い
されるもの事
対象を決められないこと
何かの全体
関係する状態にある人間
関係者すべてが成功だと認める結果
制度により紛争が解決されている状態
ものとものの位置が同じならば存在しない場所
ものとものの間に他のものが存在すること
隔たりの量
ものの場所が変化する
移動により間隔が減少すること
自己の価値への接近可能性


             

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